統率者戦(EDH)でブラケット制度が登場してから、しばらく経つ。
そして階級分けのためにゲームチェンジャーなる“強いカード”のリストが作成されている。

補足すると、ブラケット1(エキシビション)、ブラケット2(コア)では使用禁止、ブラケット3(アップグレード)では合計3枚まで使用可能、ブラケット4(オプティマイズド)、ブラケット5(cEDH)ではすべて使用可能。
また、ブラケット制度は無限コンボや追加ターンに緩い抑止力をかけている。
カードの有無ではなく構築理念がブラケットを分けるため、ゲームチェンジャーを3枚投入した最適化されたコンボデッキは、ブラケット3ではなくブラケット4となる。
《眷者の神童、キナン》を統率者に据えたコンボデッキは、ゲームチェンジャーを3枚までだとしてもブラケット4になる。
カードの取捨選択ではなく、構築の方針でのクラス分けは納得のいくシステム。
今回は2025年4月時点でのゲームチェンジャーのリストを見て、ブラケット制度など色々と語りたいと思う。
ゲームチェンジャー
妥当かどうかはユーザーがこれから考えていけば良いが、数枚取り上げて僕自身のコメントを書きたい。
《ドラニスの判事》

特定のデッキを詰ませる能力があるし、多くのデッキが減速する。
自分で使うと除去の的になりやすくイマイチな気がするが、相手に使われると非常に強い気がする。
それは常に自分が除去を持っているとは限らず、除去を持つプレイヤーはその人が最も有利なタイミングで除去するため。
不快だから禁止、それはブラケット1-2では十分な理由だし、枚数制限のあるブラケット3でも実質禁止みたいなもの。せっかくなら、このカード使うよりも能動的にアクションを行えるカードを入れたくない?
《聖別されたスフィンクス》《オークの弓使い》《敵対工作員》《アウグスティン四世大判事》など、除去できない限り『不快』というのはリスト入りするのに十分な理由なのだ。
偉そうなことを書いたが、この内容は概ね公式のホームページに書いてある。
《セラの聖域》

長いことEDHをプレイした中で、ほとんど使った記憶が無い。
《進歩の災い》というエンチャントデッキの天敵が出てからは一度も使ってないかも。
《ガイアの揺籃の地》と比べて明らかに格下だし、リスト入りしていない《陰謀団の貴重品室》より強いかと言われると自信を持って答えられない。
直接強さの比較は難しいが、多分《ニクスの祭殿、ニクソス》の方が使われると思う。

しかし、あまり使われないカードならば、偶発的に暴力的に強い状況が出てしまわないように、リスト入りもやむを得ないと思う。
これは公式にはない言説。
《輪作》

《古の墳墓》《ガイアの揺籃の地》がリスト入りしている以上、それらに簡単に変換可能なカードは制限せざるを得ない。
とはいえ、6ターン目以内に決まるコンボに制限をかけるブラケット3では中長期的な構築が必要で、その場合は《輪作》のようにアドを犠牲に速度を追求するより、アドを失わないものの方が良い。
具体的には《森の占術》《刈り取りと種まき》《ピールの気紛れ》など。

実はこれは黎明期のEDHに似ている。
無限コンボといっても、《厳かなモノリス》《Power Artifact》が主流であり、ゲームが決まるのも5-6ターンくらいが多かった。
この黎明期にはリソース獲得が得意な統率者も限られていて、《金属モックス》などとアドを失う加速は、多少の妨害を受けるだけで手詰まりになりやすかった。
《隠遁ドルイド》など一部の速度特化のデッキ以外は、カードアドバンテージを重視しつつ更に3-4マナ域の中継ぎのドローが必要。
《生き埋め》+《再活性》のようにコンボのコストが減っていくにつれ、あるいはリソース獲得が得意な統率者が増えるに連れて、速度が重視されるようになってきた。
ブラケット3は、安定して4ターン目にコンボを許容していないため、実は構築指針としては黎明期のEDHが参考になる。
半端に《輪作》《金属モックス》のようなカードを入れるのではなく、《ラノワールのエルフ》から《耕作》を唱えるくらいの気持の方が向いている。
ゲームチェンジャーの穴
問題はコンボではないし、基本的に問題が起こるのはブラケット3と思っている。
何でもありのブラケット4以上は、あらゆる相手の戦術を受け入れなければならない。
ブラケット2は構築済みが基準のために完成度が高すぎるシナジーデッキは組めない。
ブラケット3は幅が広い。
幅の広さは取れる戦略の完成度が違うこともさることながら、相手の危険な行動への対抗策の差が問題となる。
多くの場合、自分のやりたい事が優先で柔軟に対処できないので、特定の状況で著しくゲーム体験を損なう。
それらはブラケット3の構築理念やゲームチェンジャーである程度は防がれているが、やはり欠陥もある。
自分の過去の経験も交えて困りそうな展開を考えてみた。
ビートダウン
無限コンボの優しい点は、全てのプレイヤーが同時に敗北するために、一人だけプレイ時間が極端に減ることは無いこと。
しかし、ビートダウンは違う。
例えばパワー21の統率者に殴られて敗北してしまい、別のプレイヤーがリセット呪文を唱えて更地にすると、しばらくゲームが続くために敗北したプレイヤーが手持ち無沙汰になる。
これが本当に詰まらない。
パワー21なんて難しそうに見えるが、《マローの魔術師ムルタニ》はあっさり可能だろう。

被覆があるため除去も困難で、自分がまだワイワイEDHをプレイしていた頃、相当苦しめられた存在でもある。
《スーラクと殺し爪》がいれば速攻トランプルで瞬殺される。

一応コンボだが、サーチカードは少なめという条件もあるので安定して6ターン目以内に決めるには少し難しい。ブラケット3の理念から外れているとも思わない。
しかし無限コンボばかり語られがちだが、自分だけが《ムルタニ》で倒されることと、《アウグスティン四世大判事》で皆で苦しむこと、どちらが楽しいかと言われれば多分後者だろう。
他にも《霧を歩むもの、ウリル》に《祖先の仮面》を付ければ、序盤に置いた《繁茂》《豆の木をのぼれ》など合わせてパワー21は十分に目指せるだろう。
《大神のルーン》をつければパワー11でも良いのですぐ到達するし、チャンプブロックを貫通する。

そして《ウリル》も呪禁があるため除去しにくい。
最近のカードで言えば、《星の勇者、クラウド》に《速足のブーツ》をつけると速攻・二段攻撃で強力な一撃が入る。

トランプルの付与やパワーの修整など装備品で容易だし、クリーチャーの全体リセットでも返しで速攻付きで殴られるために対処しにくい。
こういったお気に入りの統率者にオーラや装備品をつけて殴る戦術は、ブラケット4のオプティマイズドとは言い難く、コンボとも違う。
好きなカードを生かすための構築で自然と達成してしまうし、オーラや装備品は型落ちの安物でも結構な破壊力を持つカードは多数ある。
たまたま上手くいくと、かなり早いターンに21点入ったり、フルタップの隙に速攻で襲われる。
だからと言って《クラウド》に装備品をつけて殴ることを禁止ともゲームチェンジャーとも言えない。
その楽しみ方はブラケット3でしか無理だと思うから。
《霊気化》《霊気渦竜巻》

一人のプレイヤーを極端にいじめるカード。
まあ空気読めと言われればそれまでだが、先程の被覆や呪禁付きアタッカーを対処可能なカードでもあるので、防御手段として妥当でもある。
このカードの問題点はビートダウンにしか効かないため、積極的に殴らないデッキには使われることがない。
《霊気化》《霊気渦竜巻》は一例で、対攻撃クリーチャー以外でも、特定のプレイヤーだけに刺さるカードは潜在的に問題を持つ。
しばしばプレイヤーが固定化されがちなEDHでは、毎回同じプレイヤーが虐められることになりかねないのだ。
ハンデス
パイオニアEDHで《スピードデーモン》《人造魔道士、ケフカ》とハンデス主体のデッキを使って思ったのだが、リソース確保が十分でない手札だと詰んでしまう。
土地4枚くらいで手札を削りきられてしまうと、トップから引いた高コストのカードは使えず、次のハンデスで捨てさせられるだけ。
土地4枚くらいの時にはまだ手札は残っているはずと思われるかもしれないが、マナ加速やクリーチャーを展開すると3枚程度のハンデスで尽きてしまう。
そしてクリーチャーは流されて終わるというわけだ。
こうなると毎ターン土地を引けるかどうかのゲームになり、土地が引けた後は有効牌を引けるかどうかのゲームになる。
つまりドローしてエンドを繰り返して、プレイ時間が極端に少なくなる。
パイオニアEDHでの最適化、すなわち4-5ターン目に強力なアクションを起こす(もしくは対処する)想定の構築であっても、苦しくなるのだ。
ゲームが決まるのが概ね6ターン目以降を想定している場合、なおのこと厳しいだろう。
パイオニアEDHでは《泥棒ネズミ》をはじめ微妙なパワーのハンデスで、《無駄省き》から連鎖したり、二人のプレイヤーがハンデスしないと、土地4枚で詰みは起こりにくかった。
通常のEDHでは《精神の剣》《狂乱病のもつれ》《抑圧》など痛み分け的な高パワーなハンデスがあるので、自分がリソースを獲得する統率者なら(それこそ《ケフカ》なら)、一人で一方的なゲームを作れてしまうだろう。

《底なしの奈落》《罠の橋》《無のブローチ》を置いて、懐かしのロックを完成させたいハンデスマニアもいることだろう。

《カラスの罪》《壌土からの生命》のコンボを再現したい人もいるかもしれない。

公式では一切語られていないが、僕は最適化されていないデッキ同士の戦いでハンデスを危険な戦略だと思っている。
ブラケット4の幻想
以前にパイオニアEDHと通常EDHの異種混合戦をしたことがある。
パイオニアEDHはマイナーフォーマットでありながら、通常EDHの構築ルールにプラスαで制限を設けているだけなので、同じ卓を囲めるのである。
例えば《勇敢な追跡者、ルビー》のデッキにはゲームチェンジャーが1枚も入っていない。
パイオニアのカードプールでは最適化したが、EDH目線では妥協の塊みたいなデッキなので、ブラケット4とは言い難い。
勿論ゲームチェンジャー不在でもブラケット2は蹴散らすだろうが、ブラケット3に分類するかは意見が分かれるだろう。
それだけブラケット3の許容度が人によって違うとも言えるが。
しかし実際に通常EDHのブラケット4相当のデッキにぶつけると、意外と勝てるゲームもあってブラケット4でも良い気がしてくる。
なんなら《ギランラ》《東の樹の木霊》のデッキはパイオニアEDHに全然勝てなくてブラケット3に格下げしたいくらいだった。
ブラケット4は最適化というワードから、《ガイアの揺籃の地》《ライオンの瞳のダイアモンド》《伝国の玉璽》といった高額カードを揃えないと土俵に上がれない気がしてしまう。

しかし実際にはパイオニアEDHであってもパイオニア内で最適化しているなら戦える。
マナ加速に《硬化した屑鉄喰らい》が強いと評価される環境だよ?

《太陽の指輪》《極楽鳥》を入れられるデッキなら、パイオニアのカードプール+αで、古の高額カードなんて無くても十分戦えるデッキになると思わないか。
EDHは多人数戦なのだから、それなりに妥協があっても、交渉や駆け引きでパワーレベルは変動する。
多分、多くの人の思うブラケット3の妥協部分は、ブラケット4でも戦えるレベルなのだ。
ただし注意点がある。
一つ目はパイオニアEDH側は《白鳥の歌》《断れない提案》《耐え抜く者、母聖樹》など通常EDHでも使用に耐えうる軽量妨害カードをしっかり採用していたこと。

二つ目はパイオニアEDHのデッキは、《むかつき》特化の2KILLデッキとは戦わせていない。さすがにそれは無理。

《硬化した屑鉄喰らい》を出してる暇なんて無くなってしまうのでデッキとして成立しない。
しかしマナ加速を《極楽鳥》《太陽の指輪》などに置き替えるなら、妨害する余地も生まれる。
《溜め込み屋のアウフ》を入れるだけで大きく減速させられる。
実はブラケット3の幅が広いのではなく、ブラケット4の敷居を勝手に高く見積もっているだけなのだ。
最適化(オプティマイズド)という言葉が良くない。
しっかりしたコンセプトで、妨害カードを低コストに入れ替え、そしてプレイングを考えれば、ブラケット4でも十分戦える。
まとめ
パイオニアEDHはブラケット4。
ではまた。
ブラケット3の構築をする上で下記記事は役立つと思う。
あとはパイオニアEDH関連も。
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