EDHエアプ発言をしてるのに何を語るの?と言われるかもしれないが、僕の主戦場のパイオニアEDHは、ルール的にもEDHの範疇である。
昨日もパイオニアEDHで遊んだ私は、真のEDHプレイヤーである。
最初にオススメ著書から。
ロバート・D・チャルディーニ著『影響力の正体』
心理学は専門では無いが、何冊か読んだ心理学系の本の中でトップクラスに良かった。
実用的で参考になるテクニック、科学的で充実した内容なのに、各章の終わりで「私はこんな風に騙された!次からはこうやって(科学的に)やり返す!」と感情的に語るパートが読み物としても面白かった。
さて、EDHではこんなことが良くある。
- 対戦相手が定石に則ってないから負けた
- 対戦相手の理解度が低くて負けた
その気持ちは良く分かる。しかし、嘆いても仕方が無い。
次回以降に対策が出来ないから。
良い当たり運に恵まれるよう祈祷すればよいかな?
招待制でないなら、対戦相手に一定以上のプレイングを期待することはナンセンス。
言い方は悪いが、ド素人にかき乱されても文句は言えない。
EDHは一つのデッキに掛かるコストが大きく(金銭的にも練習の時間的にも)簡単に乗り換えられないため、昔からの“相棒”と“拘り”で戦うプレイヤーが一定数いる。
彼らの信念が特殊だったとして、たまたま出会った我々がするべきは文句では無く、むしろそういう相手にどうやって勝ち筋を見出すか、という話。
以前に別の記事でも述べたが、参加者の半数はマイナーデッキ。
想定外のデッキや戦術も、どこかで当たる。
対戦相手3人がログラクフならば《耳の痛い静寂》で3人抜きすれば良い。
しかし普通はよく分からないデッキが混じるので特化しすぎた対策は裏目に出るし、想像よりもカオスなゲームが待っている。
目に見えない戦術は通りやすい
10年以上EDHをプレイして、ずっと変わらず思うことは、盤面しか見ない人が多いということ。
本当に多い。
盤面の優劣で妨害の矛先を決める人は結構いて、そのような人が卓に1人でも混じると手札でコンボを揃えるデッキが有利になる。
色や統率者によって勝つために必要な工程が違うという当たり前の事実は受け入れられず、盤面の均衡に固執する人は多い。
何なら手札の枚数差さえ無視する人がいる。
EDHが生まれて年月が経ち、色んな人が記事を書いて、全体的なプレイヤーの練度が上がっていると思ったが、この基本的な事実は変わらない。
というか重要だと思われていないのかもしれない。
盤面しか見ない。
手札の枚数だけで考える。
そういった安直な思考を持つ人は多い。
そして、その人達に先々の展開を語って説得することは無意味。
シャーロック・ホームズで有名なアーサー・コナン・ドイルはこう述べている。
『凡庸な者は自身より高いものを知らないが、才能ある者は天才を瞬時に見分ける』
あなたが対戦相手のデッキの動きを知り、泣き所を的確に蹴ることが出来るなら、確実に才能ある人。
しかし、あなたの考えは多くの凡庸なプレイヤーには理解出来ない話。
その才能は説得という無駄な行為に使うのでは無く、凡庸な人間の特性を分析して誘導したり利用することに向けた方が良い。
先を見据える思考は特別な能力
かつて自分探し()の一貫として、ストレングス・ファインダーを行ったことがある。
その科学的な妥当性はともかくとして、わりと自分の特性にあった結果だった。
僕の最も上位の特性は『戦略的思考』。
書いてそのままの通りである。
この思考の持ち主は、目的達成までの道のりを列挙して、取捨選択していくのが得意という話。
まあ分かる。読むまでもないかと思いきや、解説を読み進めると予想外の内容が書かれていた。
この考え方自体は特殊なもの。
そう、他の人には理解が難しい思考法なんだと。
「これ見立てが甘過ぎじゃない?」
「予想される事象に対して何で手を打ってないんだろう」
という考え方は特別な思考なのである。
先読みしない人達に対して「考えれば分かるのに」と疑問に思うことは沢山あった。
でも、そもそも複数の分岐シナリオを想定して対策を立てること自体が、個人の特殊能力なんだと納得した(シナリオ分岐はギャルゲーで鍛えられるがな)。
例えば『愛嬌があって人懐っこい』みたいな特性と同じ。
個人の性格やキャラクターと同じように、戦略的思考も簡単に真似して習得できるものではないんだと。
そして「切り捨てる」という考え方も戦略性の特徴のようで、これも凄く納得した。
二兎を捕まえる見込みが無ければ、早々に片方を諦める。
でも世の中には、見立てが悪く両方とも追いかけて、一兎も得られない人がいるわけで。
そういう人たちとは根本的に考え方が違う。
だから、僕自身の切り捨てる戦略的思考は受けいられない人も沢山いるんだと理解した。
おそらくEDHプレイヤー(カードゲーマー)の中には、このような戦略的思考が備わっている人が多いと思う。
そういう人はゲーム特性上、結果を残しやすい。
『ライフは1点でもあれば良い』が格言として残るのは、戦略的思考の持ち主には適度に切り捨てることは当たり前の発想だが、それ以外の人達にとっては驚愕すべき事実だからと思う。
戦略的思考の持ち主が多いからこそ一定の支持を得て、戦略的思考を持たないものも多いからこそ印象的な言葉として広がる。
だからこそ戦略的に考える人に伝えたい。
「先のことは考えれば分かる」
これは特別な思考法だと。
あなたの考える未来の道筋は、戦略的思考が備わっていない人には見えていない。
説得は無意味
相手を論破して打ちのめしたいなら、正論をぶつけ続ければ良い。
しかし相手の行動を変えたい場合は話は変わる。
正しい理論であっても、相手の理解を超えていると全く理解されない。
人間は、自分の理解を超えた世界が分からない。
それどころか一般的に能力の低い人は自分の能力を過大評価する傾向があるので(ダニエル・クルーガー効果)、自分が理解出来ないもの=間違った理論とレッテルを貼り反発を受けることになるだろう。
今サラッと話したが『傾向』という概念を受け入れることにも一定以上の知性が必要。
理解が乏しい領域に対してはグレーを受け入れられず、白黒ハッキリさせたがる。
これは個人の特性でもあるし、素体が優秀であっても不勉強な分野に起こりがちな話でもある。
正論は自分の立ち位置を弁えた才能ある人間が、受け入れ態勢が整っている場合にしか効果が無い。
そして、正論が通用する好機は世の中に存在しない。
基本的に、相手の行動を変えたいのであれば正論で押してはいけない。
あなたが勝つために今必要なことは。
論破?相手の行動を変えること?
良く考えて欲しい。
誘導の成功率をあげるもの
はじめましての対戦相手に、相手の性格や理解度を推し量り、相手に合わせた理論をぶつけることは困難。
相手のプレイングのクセを認識する頃には、ゲームが終わってしまう。
では、どうしたら良いのだろう?
2つのアプローチを提案する。
人が人を見抜く能力
1つ目は対戦前に少しの会話をする。
人間は相手の能力や性格を、たったの数分で判断して、しかもその推測は結構当たることが心理学の研究で分かっている。
初対面であっても、自分と気が合うかどうかは勿論、相手のIQや収入の予測さえも、なかなか良い精度で予測できるらしい。
短時間で人が人を査定する仕組みは科学的にも分かっていないが、使える機能ではある。
対戦前にわずかな会話の機会を持つことで、相手の傾向を掴む。
「この人はEDHの経験が浅くて変なプレイをしそう」
あなたがEDHを長くプレイした上でそう感じたのなら、その直観は多分当たる。
実際、ある種の専門家は多数の経験とパターン認識から、しばしば論理的な推論をすっ飛ばして、直観的に答えを導くことがある。
これをノーベル賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンはskilled intuitionと呼んでいる。
専門家は論理的な思考のプロセスが早いと言われることがあるが(むしろ素人には良くそういう解釈をされるが)、仕事上で自分が何らかの専門家になった今の感想としてはskilled intuitionの方がしっくりくる。
第六感ではなく、第一感、である。
むしろ初対面の相手の傾向のように、言語化できない要素が存在するのに無理に分析すると予測精度が落ちてしまうだろう(分析麻痺)。
沢山勉強して沢山経験したことに対する直観は信じた方が良い。
というか、こんな話は以前noteにも書いたなあ。
心理学的なアプローチ
もう一つは心理学的な誘導。
集団に対して適応して一定の成果を挙げる科学が役立つ。
科学は結果を保証しないが、可能性を上げる。
成功率を20%から25%に変えられる。
そこで例えば冒頭に紹介した『影響力の正体』が役立ったりする。
一つテクニックを紹介すると、相手に恩義を感じさせる方法が挙げられる。
例えばゲーム開始前に、小さなチョコレートを一つずつ配る。
そうすると、ゲーム中にあなたの要求を受け入れて貰える確率が上がるだろう。
実際に、とある宗教団体が寄付金を募る際に、道行く人に一輪の花を渡した上で寄付を依頼をすることで、大幅に寄付額をアップさせたという逸話もある。
相手が欲しがるかどうかは関係なく、小さな恩を先に押し付ける。
この恩義のルールは簡単に出来るのならば、使わない手は無い。勝つために手段は選ばないのだろう?
別のテクニックとして、対戦相手が望ましくない妨害の打ち方をする場合を挙げよう。
「それをすると、対戦相手Aが得をして、あなたが損をしますよ」と伝える。
あなたが損をする、と強調することが大事。
人間は自分が損をする行動を避ける傾向にある。
理由付けは厳格である必要は無い。
それっぽく思わせれば十分。
あなたが一番損をしますよ?
これはキーワードである。
それぞれの小技は100%の結果を保証するものでは無いが、沢山のアプローチを学び使い続けることで、いつかどこかの1敗が1勝に変わるだろう。
勝利への直接的な貢献度は自分で実感することは出来ないが、可能性を秘めている。
実行する上で損が無いなら、やるべきである。
さあ、大事な試合の前にはチロルチョコをまとめ買いしよう!
最後に
僕はデッキの最後の数枚のカードを突き詰めるより、駆け引きの精度を上げるべきだと考えている。
結局、最後の数枚のスロットは対戦相手(つまり当たり運)によって左右されてしまうし、100%メタゲームやマッチングを読むことは不可能。
それよりも大きなインパクトがあって、拘るポイントがある。
むしろ駆け引きを有利にするカードの取捨選択が望ましいと思い、かつてはトラティムにおいて試したことがあった(故DiaryNote)。
振り返ると、この頃が一番EDHにのめり込んでいた時期で、構築以上に思いを馳せる余裕があった。
それまでも漁夫の利的なゲーム展開を狙いたい点は何度か話していたが、その糸口は見つからなかった。
しかしトラティムを使い込んでいた時期だけ何かが違っていた。
今の自分と明らかに見えているものが違う。
意外と過去の自分の記事に驚かされる事は多い。
これだからブログはやめられない。
逆に当時の自分はアホなこと言ってるなあ、と思うことも多いけどね。
今現在の最適解は分からないけど、凝り固まった同じアプローチばかりが正解では無いのでは?という問題提起をしたかった。
デッキの構築論なんて何年も同じ事を議論しているだけだし、コンセプトやゲームプランに応じた取捨選択を述べることはベースライン。
もっと先の議論を見たい。
ではまた。
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