
デッキリスト
コンセプト
パイオニアEDHは緑が強い。
コンボが弱いために緑のファッティを並べて殴り倒すプランは有効で、過去に《勇敢な追跡者、ルビー》を組んだ。
2マナ域を統率者で確定させることで3ターン目に4マナで土地加速+2が使用でき、4ターン目に安定して7マナ使用できることが売りだった。
しかし《ルビー》の除去にとても弱く、またマナカーブは4マナ域が厚い一方で3マナ域が極端に少なくなるため、除去を受けると序盤に大きく出遅れるリスクがある。
《勢い挫き》をはじめ2マナ域の布告除去がかなりキツく、黒の除去が増えるにつれて統率者変更を余儀なくされた。

さて、《創造の座、オムナス》はマナ加速から重量級カードの使用を狙うわけだが、マナの使い道の自由度が高いため、追加ターンや適当な高コストスペルを積んで統一感が無くなる欠点があった。
なんとなく動きが噛み合わないし、瞬間的にマナ加速+4はありがたいものの、7-8マナのカードを1枚使うだけでは勝てず、別に爆発力を産む何かが必要。
そこで緑のファッティに焦点を当てた。
EDHの緑は何となくマナ加速して重いカードを一枚ずつ使うのでは無く、マナ加速とドローが連鎖して指数関数的に展開する点が特徴。
《水蓮のコブラ》とフェッチから《原初の征服者、エターリ》を出し《森の轟き、ルムラ》が捲れて上陸でマナを出して、《グレートヘンジ》を置いて《野生の魂、アシャヤ》を出して更に上陸を稼ぎながらドローを進めて…
単品での運用も勿論大事だが、コンボと言うよりシナジーで連鎖することを意識している。
つまり序盤から中盤は連鎖に入るためのマナ加速とドローで場を整えるのが目的になる。
《創造の座、オムナス》の目的も同じで、手札消費無く出てきて(ETBでのドローがあるので実質+1)、マナ加速によって場を整えることを狙う。
高コストスペルを使うために、中継ぎカードを統率者に制定して安定させる目的。
《オムナス》は何となく唱えて次のターン7-8マナの呪文を唱えるのでは無い。
最終的に連鎖を狙うための準備を整える。
そのため《オムナス》誘発や、最終盤面を見据えて中コスト帯のマナ加速も沢山採用した。
もちろん《オムナス》が対処されてもマナを伸ばせることが狙いで、《オムナス》生存時は相乗効果で更に加速する。
通常EDHの《ワイアウッドの呼び声、ギランラ》のような使い方で、こういう意図で《オムナス》を運用する人はあまり見ない。
オムナスの勘違い
- 2マナクリを多数採用して3ターン目にオムナス
- 4ターン目にフェッチを置いて8マナ以上を狙う
これは《創造の座、オムナス》を使う上で誰もが狙いたくなるだろう。
しかし残念ながら使っているうちに、この方向性こそが《オムナス》を弱くしていることに気がつく。
まず《水蓮のコブラ》以外のマナクリは2ターン目以外に不要。
パイオニア界に2マナ域で好きな色が出る生物は沢山いて安定した初動のために枚数を入れたくなるが、マナクリは上陸回数を稼ぐことも出来ないし、高コストスペルを使う上ではあまり足しにならない。
ランパン形のカードで土地を伸ばせば、《オムナス》の上陸を稼ぐだけで無く、再キャストも容易になるが、マナクリが並んでしまうとリセット1枚で瓦解する。
一度リセットでマナクリごとマナベースを流されると、何とかマナを伸ばしても統率者単品では仕事しないので、やはり手詰まりになる。
そもそも4ターン目に安定してパワースペルを使いたいなら《原初の征服者、エターリ》《偉大なる統一者、アトラクサ》を統率者に制定して、マナカーブを2→4→7に特化させた方が良い。
マナベース過剰の構築は7→9→11も容易で、統率者領域から連打で戦える。
《オムナス》は一見して4マナ域を埋めて工程の一部を統率者が担っているようにみせかけて、実際にはフェッチランドを引かなければならないため、2マナクリ、フェッチ、パワースペルの三種類を都合良く引かなければならない。
つまり最速で7マナ呪文を叩きつけるなら《オムナス》は向いていない。
そして《オムナス》誘発のための《広漠なる変幻地》、オートフェッチなどの弱めのタップイン土地が多くなると、トライオームや諜報ランドも合わせてタップインだらけになって2マナクリすら安定して出なかったり、基本土地を序盤から沢山探すので、色事故が非常に増える。
試行錯誤の末に辿り着いたのは、2マナクリは重複しないように絞る
《水蓮のコブラ》は上陸を稼ぐデッキの性質上、ものすごく強いから確定。
《イリーシアの女像樹》は2マナ加速になるし、《硬化した屑鉄喰らい》は墓地対策がえらい。
この環境は《時を超えた探索》《時間への侵入》のような探査や、《開花の亀》《シェオルドレッド》《二重視》などの墓地が大事なカードが多い。
一般的なマナクリーチャーは枚数を抑えた。

非クリーチャーの2マナ加速は《中心核の瞥見》《創発的配列》《秘儀の印鑑》《成長のらせん》《群れの家宝》と枚数が少ない。

さすがに《アイレンクラッグ》は使えない。
2マナ域は加速で埋め切れないので《ケンリスの変身》《当惑させる難題》での妨害や、諜報ランドを増やしてトライオームと共に時間を潰すことにした。

実際は3ターン目にフルタップで《オムナス》が出しても、的になりやすく、続くプレイヤーの4ターン目の7マナスペルを通しやすくしてしまうし、無理に2マナ域で加速は狙わずとも良い。
3マナ域には土地を場に出すカードがあるため4ターン目に《オムナス》キャスト+フェッチ、《流れ者の日課》の調和、《重厚な世界踏破車》で2回の上陸を狙い、生み出したマナから更に土地加速する。

《重厚な世界踏破車》は土地を置く前に《オムナス》を乗せて殴って、第2メインフェイズで2枚目の土地を置く。
場合によっては相手の除去を警戒して《オムナス》を出すターンを遅らせてでも土地加速を狙う。
最速の動きばかり狙ってもムラが大きすぎるために、粘り強く戦える方法を両立したい。
3ターン目《オムナス》以外は、出来れば《オムナス》が出たターンに上陸2回誘発で4マナ→更に別のマナ加速を狙いたい。
連鎖を狙う
《原初の征服者、エターリ》はパイオニアEDHでは10-15マナ相当の活躍を期待できる、爆発力を産む筆頭である。

マナ加速に成功したらサーチカードから積極的に狙う。
パイオニアEDHでは、こういったマナ不相応の動きを如何にして作り出すか、が鍵。
ただし、このデッキの真髄はチェインにある。
《水蓮のコブラ》《復活した精霊信者、ニッサ》《洞窟探検》が実はキーカード。

《コブラ》《ニッサ》が並んだり、クローンで増やしたり《機械の母、エリシュ・ノーン》で誘発を増やすと更に良い。
その状態で《森の轟き、ルムラ》《道を開けよ》は大量のマナ加速になるし、《野生の魂、アシャヤ》《ティムールの戦告者》と併用すると次々とクリーチャーが並んでマナが増えることもある。
《宝物庫生まれの暴君》《リシュカーの巧技》《グレートヘンジ》でカードを引いたり、《原初の征服者、エターリ》をコピーすることであっという間に横並びして、《青銅血のパーフォロス》で速攻付与して殴り勝ち。
序盤もたつくことを許容する理由は、土地を大量に並べる手段があり巻き返せることと、マナと手札さえ在れば場合によっては1ターンで一気に場を作り上げることが可能なため。
高コスト帯のカードは基本的には加速もしくはドローによるチェインを意識している。
そのため《最深の成長、オヘル・カスレム》のような単品活躍のゆっくりアド生物は不採用になっている。
無限コンボ
一応《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》があるが、プレインズウォーカーは探せないので頻度は少なめ。

《サリアの槍騎兵》《舞台座一家の料理人、ロッコ》を採用すれば14マナの1枚コンボになるが、さすがに重くて弱い。

《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》ともに単体で《エターリ》などをETBを使い回して活躍できるので、コンボでなくとも使えるのが良い。
また《守護フェリダー》を《賢いなりすまし》などクローン系でコピーすると互いに明滅させあう。

これだけでは勝てないが、《グレートヘンジ》で無限ドロー、《機械の母、エリシュ・ノーン》がいれば土地や《オムナス》を巻き込んで無限マナ無限ドローなど、3-4枚揃うことでコンボになる。
クリーチャーサーチだけで完結するために《自然の律動》で2枚探すと結構揃ったりする。
個別カード解説
《ルビー》の解説と重複する部分もあるので絞って取り上げる。
《ティムールの戦告者》

最初に見たときにバグみたいな強さだと思ったが、実際使っても評価は変わらない。
破壊力はあるけど隙が多くて使いにくかった《太陽鳥の祈祷》が非常に使いやすくなり、ある程度場が整っていれば《ティムールの戦告者》→《太陽鳥の祈祷》→手札からスペルが同一ターンで出来てしまう。
《八百長試合》

ファッティを狙うこのデッキでは《実物提示教育》を彷彿させる強さ。
ダメ押しカードなので場が整っていないと弱いが、そもそもパイオニアEDHは高コストスペルを1枚使って勝ちではなく、何枚も連鎖的に使って1:3を押し切るのが勝ち筋の一つなので、こういうダメ押しカードは歓迎。
《森》
4色デッキなのに5枚も入っている。
《中心核の瞥見》《ニッサの巡礼》《咲蔦森の執政》な《森》をサーチするカードがあるため。

もちろん《耕作》《ゼンディカーへの侵攻》など基本土地サーチも意識。
土地の総数が40枚と多めなので、《森》以外も含めた10枚の基本土地があっても事故率は低い。
オムナスの弱さ
加速能力が強そうに見えるが、フェッチランドに限りがあるために何らかの補助が必要で、使っていると「普通に1-2マナ加速するカードでよくね?」となる。
強そうに見えることも問題で、良く除去の的になったりリセットを浴びるので満足に能力を発揮できなかったりする。
半端に目立つくらいなら、ランパンしてた方が強いのである。
マナが伸びれば《オムナス》を出す必要も無くなるので、じゃあ、いつ出すのが良いのか?という存在意義を問われる次第。
ちなみにオートフェッチや《広漠なる変幻地》などの弱いフェッチで補うと事故率があがるし、タップインだらけで非常にテンポが悪い。
ところでパイオニアEDHでの強いデッキの条件は
- 《原初の征服者、エターリ》を使える(相手のエターリを受けてコピーでも可)
- 追加ターン呪文を使える
の二つのうち一つが基本的には必須とも言えて、更に
- 打ち消しがある
が強いデッキの条件に思える。
確かに《エターリ》は使えるのだが、追加ターンや打ち消しまで枠が取れない。
統率者がハイパワーカードならデッキの大半をマナ加速に寄せられるし、統率者がマナ加速ならデッキのマナ加速を削れる。
しかし《オムナス》は単品で活躍できないので、デッキ内のハイパワーカードもマナ加速も削れない。
何とか使える形が今のデッキだが、限界を感じる。
この矛盾をクリアするには、やはり強いフェッチランドが増えてくれないと無理だが、除去されやすいターンにしか唱えられない点はなかなかカバーしがたい。
まとめ
色々と限界を感じたものの、パイオニアEDHの赤緑特有の展開力を堪能できるデッキではある。
ではまた。
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