【EDH】緑のエルフが冷遇されてきた歴史

様々な危機を乗り越えながら生き延びたEDH界のエルフだが、指輪物語からは《オークの弓使い》でついに絶滅することとなった。

ちなみにここで言うエルフとは、緑単や緑がメインカラーで、緑のマナクリからクリーチャーを展開していくデッキの俗語で、必ずしもエルフメインのデッキのことではない。

実はEDHの歴史の中で、緑の冷遇は今回に限った話ではない。

今日は緑の受難について語ろうと思う。

黎明期

《トレイリアのアカデミー》が使えたため、青茶一強であった。

しかし、そこに一石投じたのはエルフ。

《花の絨毯》《無のロッド》《無垢への回帰》といった青茶メタを搭載し、最初は禁止だったが2009年に解禁された《ラノワールの使者、ロフェロス》が、唯一青茶に対抗できる非青として活躍した。

最初の頃は《チャネル》もなぜか使えたし。

青茶一強で生物除去は薄くなりがちだったので緑は自由に動けたが、さすがに《ロフェロス》は強かったため青側もクリーチャー除去は必須になった。

しかし《ロフェロス》は2マナという軽さと、土地を伸ばすデッキの特性上、除去されても再キャストが容易で対処しにくい点が強かった。

この時に発掘されたのが今でも主要なカードである《金粉のドレイク》によるコントロール奪取。

当時は《家路》もなかったので、《子守大トカゲ》で取り返すしかなかった。

青茶 vs. ロフェロスの構図はしばらく続いたが、残念ながらロフェロスの統率者指定は2010年6月に禁止となった。

最初のエムラクール

ロフェロスによる緑の戦略の開拓により、《艦長シッセイ》《シミックの幻想家、モミール・ヴィグ》《略奪の母、汁婆》などのエルフベースのデッキが活躍した。

さらに《引き裂かれし永劫、エムラクール》の登場により、緑の強さは加速した。

現在ほど環境は早くなかったため《ガイアの揺籃の地》《ティタニアの僧侶》に《クウィリーオン・レインジャー》《ワイアウッドの共生虫》などを駆使して15マナ到達は何とか可能だった。

一度キャストしたら追加ターンで一番ヤバイやつに滅殺すれば、そのまま勝てる。

さらに《雲石の工芸品》のような生物を無限に出し入れするコンボでは無限ターンのパーツとしても活躍した。

《エムラクール》の追加ターンは誘発型能力なので阻止しにくく、本体はカウンター出来ないし、インスタント除去も困難だし、青からすると非常に厄介だった。

逆に緑のデッキは困ったらマナを伸ばして《エムラクール》を目指せば良く、分かりやすいゴールだった。

まさに青と緑の時代。

しかし、このカードも2010年12月、発売からわずか8か月後に禁止となった。

原始のタイタン

基本セット2011が生み出した化け物。

EDHでは《ガイアの揺籃の地》《さびれた寺院》《ロノムの口》などパワーカードをサーチでき、土地という妨害されにくいリソースを伸ばす点が強い。

エルフはどうしてもリセットに弱かったのだが、まず最初に《原始のタイタン》を目指すことで、その後の展開が安定した。

しかし、このカードも2012年9月には禁止された。

この頃は《結界師ズアー》から《ネクロポーテンス》を持ってきたり、《生き埋め》+《再活性》のウーズコンボが猛威を振るい、今ほどの完成度ではないが《むかつき》デッキも存在した。

もちろん青には《リスティックの研究》《神秘的負荷》による大量ドローもある。

そんな中で、なぜか緑単だけ虐げられた…

当時の自分もこのように述べております。

エムラの時もそうだが、緑は動きの中で目指すべきものが、特定の1枚というわかりやすい構造になってるから、目の敵にされやすいんだろうなあ。
全部強い青と違って、特定の1枚が抜きん出ているため、禁止のターゲットにされやすい。
でも、既に積み上げられた青や黒の強スペルの山に対抗するには、青黒に大量の禁止を出すか、他の色に新しく超強力なカードをプレゼントするしかないと思うけど。

Diary Noteより

森林の始原体

タイタン禁止から数か月後の2013年2月に、もっとヤバイやつが出た。

相手全員のパーマネントを割って、なぜか自分が森を出す意味不明な効果。

これで緑は盛り返したが、実際には青黒緑をのし上げた。

もちろん、緑単も《自然の秩序》で踏み倒しがあった。

しかしそれ以上に1-2ターン目にリアニメイトが強すぎた。

更にコピーするダメ押しまで存在する。

誰かが《森林の始原体》を早出しして、別の誰かが復帰のために《幻影の像》でコピーすると、残った二人はこの時点で土地が2枚割られるためゲームにならない。

《森林の始原体》対策で《幻影の像》《ファイレクシアの変形者》などコピー生物は入れ得。

コンボよりも《森林の始原体》からゲームが始まる。

ある意味で緑の最強時代。

2014年2月に禁止になったが、《森林の始原体》が使えた1年間は、暗黒時代だったと思う。

ここからしばらくは緑に魅力的なカードの追加は少なく、青黒を使っておけの時代だった。

二つのコンスピラシー

《トレストの密偵長、エドリック》《帰還した探険者、セルヴァラ》などエルフ向きの統率者が出現。

王位争奪では《野生の心、セルヴァラ》が登場し安定3KILLを実現。

今ほど環境が早くないので当時の3KILLはかなり強い。

やはり青黒が一番強かったため、青黒を意識してクリーチャー対策が薄くなるとエルフは無双した。

が、対策されると脆い。

召喚酔いという1ターンのタイムラグは多人数戦では致命的。

一部だけでも生き残ると勝ってしまうので、《金粉のドレイク》による略奪、除去、リセットなどで反撃不能になるまで徹底的に叩かれることも多かった。

盤面で色んなやり取りをしている間に、手札でコンボを揃えた人に全部持っていかれるのはお決まりのパターン。

それでも展開しないと勝てないので、愚直にエルフを並べる。

そして除去される。

リセットに強い土地の加速が求められたが、結局《原始のタイタン》《森林の始原体》のようなパワーカードは刷られず、無策の相手には強い、対策されるとクソ弱い、そんな立ち位置となった。

統率者2016

今でも最上位である《織り手のティムナ》を筆頭に悪名高き共闘システムが出現。

ドロー能力と多色化が簡単に出来るようになり、色が少なく森が多いことで力を発揮するエルフには逆風。

さらに…

ハルクフラッシュ解禁

2017年4月に事件が起きる。

《閃光》が禁止解除される。

その後しばらくは《変幻の大男》と組み合わせたハルクフラッシュ全盛期となった。

2マナでカード2枚、色拘束も軽い上に《召喚士の契約》という0マナのサーチカードにも対応。

ハルクフラッシュを最も強く使える色であり、アド能力を兼ね備えた《トラシオス》《ティムナ》の一強時代の幕開けである。

途中で《タッサの神託者》が追加され、コンボの完成度が上がって更にまずいことに。

容易に2KILLされる上に墓地対策が効かなくなり、カウンターがないと相手にならない。

簡単にインスタントウィンしてくるので、ゆっくりコンボを仕掛けて妨害合戦をして、よし!コンボが通った、勝てる!というところで、《閃光》を被せられて敗北する。

緑単とかエルフとか甘えた人間はゲームに参戦する権利がない。

ひどすぎ…

これもある意味で緑の時代だが、真に強く扱うのは青黒デッキであり、エルフとか緑単の話ではない。

ちなみに《閃光》は2020年4月に禁止され、以降トラティムは衰退していくこととなった。

統率者レジェンズの刺客

2020年11月、統率者レジェンズから2人の刺客が追加された。

《敵対工作員》と《船殻破り》である。

クリーチャー除去が苦手な緑は簡単に詰んでしまう。

今までも《エイヴンの思考検閲者》はいたとはいえ、最強カラーの青黒から出てくるので遭遇する頻度が高く、発売当初はほとんど色んなデッキから飛んできた。

さすがに《船殻破り》は他のデッキにも刺さって、強すぎたので2021年7月には禁止された。

緑単目線ではこれは本当に助かった。

緑単の強みはマナ加速と《威厳の魔力》などの大量ドローなので、ドローできないと何も出来ないから…

赤の隆盛

緑がパワーカードを貰えずにくすぶっている中、赤には《死の国からの脱出》《波止場の恐喝者》《偏向はたき》《ロフガフフの息子、ログラクフ》といった速攻デッキ向きのパワーカードが次々に追加された。

《むかつき》デッキは洗練されてキルターンが上がり、エルフは相手のソリティアを眺めているしかない。

緑は1ターン目のマナクリの安定感が売りだったが、《敏捷なこそ泥、ラガバン》《エスパーの歩哨》など他の色にそれを上回る強力な1マナクリーチャーが追加されて優位性が無くなる。

強力なクリーチャーが追加されると、当然だが除去やリセットも採用される。

《毒の濁流》《Fire Covenant》でエルフ達はついでに一掃される。

ヒドい…

緑がなくても1ターン目の行動が充実してきたことにより、《むかつき》や《タッサの神託者》を押し通す《沈黙》系が使える白の価値が相対的に上がり、かつて青か緑がないとデッキにならないと言われたEDHにおいて、緑はいつのまにか最弱カラーとなっていた。

今後の展望?

それでも緑は高コスト帯のカードが地味ながら強化されており、構築やプレイングを整えることで何とか食らいついて来た。

《忍耐》の獲得は大きくて、即死コンボへの耐性は大分マシになった。

しかし今後も他の色に1マナのカードが刷られていくごとに1ターン目のマナクリの価値が落ちていく。

正直なところ、緑が隆盛するには《ラノワールの使者、ロフェロス》《原始のタイタン》《森林の始原体》クラスのカードが必要である。

これらの共通の強みは土地が並びリセットに強くなること。

しかし《不屈の巡礼者、ゴロス》が禁止になったように、土地を並べるランプ戦略は許されない。

そうこうしているうちに、《オークの弓使い》が登場して、《威厳の魔力》でカードを引くと全滅させられる時代となった。

《船殻破り》と違って停滞するだけでなくエルフが滅ぶ。

相手の《リスティックの研究》とコンボしてこちらの盤面を焼き尽くすでな…

しかし幾度となく虐められても、緑単のデッキは存在し続けている。

今回もきっと乗り越えられると信じている(禁止待ち)。

というわけで、EDHの緑の冷遇の歴史でした。

ではまた。

※過去の自分のDiary Noteなどを参考に書きましたが、記憶が曖昧だったり、自分が経験していない他の地域の環境など差異はあるかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました